第1話:遥と千鶴

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  今までのほんのり甘い気分を見事に台無しにする人物が現れた。 あたしは「はぁ…」とわざとらしく大きなため息をつくと、出来る限りの迷惑な顔を作って。 「今日は家に帰るんじゃなかったっけ? 学年首位サン?」 露骨にイヤミを言う。 見ると制服姿、きっと何も入っていないだろう鞄も持ったままなので、いったん家に帰ってからあたしを迎えに来た、なんていう見え透いた嘘は通用しない。 遥のことが大好きな、たくさんの“カワイイ女の子”の誰かと遊んだ帰りに違いないのだ。 「はは…。俺、ここ何年もちづの笑った顔見てない気ぃするわ」 「でしょうよ」 「ねぇ、俺が近くにいるとそんなに迷惑なの? 一応“家族”なのに何気に酷くない?」 「そうでもないと思うけど」 「…」 一生懸命に話しかけてくる遥を軽くあしらい、家路を急ぐ。 さすがにちょっと扱い酷いかも…なんて思ってやらない。 これくらいじゃ遥はちっともへこたれないし、仮にそんなふうに見えたとしてもフェイクだ。 真面目に取り合えば取り合うだけこっちが損をする。  
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