第1話:遥と千鶴

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  「ちょっ、ちづ待って!俺を置いて先に行くとか普通にやめて!」 「あたしには関係ない」 「そんなぁ…。ねぇちづ!」 ほら、やっぱりフェイクだった。 歩く速度を上げて振り切ろうとすると遥の態度が急に変わり、とたんに口調も幼くなる。 胸に手を当てて「うっ…」なんて苦しむフリが、あたしに通用するとでも思っているのだろうか。 そういうところだけ妙に子どもというか、成長が止まっているというか…あ、甘え上手と言うのか。 まぁとにかく、うざったい。 けれど。 「はぁ…。じゃあ、ついてくるならあたしの半径3メートル以内には入ってこないで。約束」 「分かった♪」 「…」 結局はあたしのほうが折れて、遥の思い通りにさせてしまう。 こういうとき今一つ突き放しきれないのは、10年の間、積み重ねてきた“姉弟”としての気持ちからなのだろうと思う。 高校に入って2年目。 今年も相変わらずお門違いな嫌がらせの毎日でも、あたしは《佐山千鶴》で遥は《佐山遥》なのだ。 どうあがいたって“姉弟”という現実からは逃れられない。  
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