第1話:遥と千鶴

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  気づいたらもう、ずっと特別。 そういう台詞は誰に対しても言っていいとは限らないと思う。 例えば、今みたいなときは特に相手のプライドを傷つける。 放課後。体育館裏。 お決まりのパターン、呼び出し。 「佐山さんさぁ、遥のお姉さんだからってあんまり調子に乗らないでくれる? 見ててウザい」 そう言って、女子生徒5人組のうちの1人の子が、腕組みをしたまま威圧感に見下ろしてくる。 彼女たちは遥のクラスメイトで、やむを得ない用事で会いに行くと、いつもわざと聞こえるように陰口を浴びせてくる子たちだ。 名前は知らない。 知っているのは、クラスと顔と、その性格の悪さくらいか。 「ちょっと。佐山さん、聞いてんの? 返事くらいしなさいよ」 「…あ、はい。すみません、これからは気をつけます」 言うと。 「親の結婚で姉弟になったらしいけど、本来、佐山さんみたいな地味な人は遥と住む世界が違うの。そこのところ、分かっといて」 捨て台詞を残して、その場を離れて行こうとした。  
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