第1話:遥と千鶴

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  ああ、もう…。 これ以上あたしに敵を作ってどうするつもりなの、遥。 遥は助けに入ったつもりなのかもしれないけれど、回り回ってとばっちりを食うのは最終的に“姉”であるこのあたしなのだ。 分かっていない。 「ちづ、大丈夫?」 今度呼び出されたとき、文句だけで済まなかったらどうしよう、と思っていると、いつの間にかその遥が目の前にいた。 いかにも心配している風を装い、顔を覗き込むようにしながらあたしの前髪を指でなぞる。 「毎度毎度、俺のせいで悪いね」 「そこまで分かってるならあたしに構わないでくれる? ちっとも嬉しくないのよ、そういうの」 遥の綺麗な指を手で払いながら、あたしは辛辣に言う。 「だいたい、ちゃんと家に帰ってこない遥がいけないんじゃない。お弁当を届けるあたしの身にもなってよ、どれだけ気が重いか」 「なら届けなきゃいいだろ」 「そういうわけにはいかないの。今月ピンチだって言ってたし、もし購買でパンも買えないくらい金欠だったら、今度はお弁当を届けないことに文句を言われるの」  
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