156人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
「もちろん、規則を守ってくれている方も沢山います。ですから、そのような方たちのためにも、なるべく、中止にはしたくないのです。でもそれだと、示しがつかないというのもありまして……。ご存知かもしれませんが、中には、沖田総司忌以外の日に来て、塀を飛び越える方もいらっしゃるそうなんです。そうまでしてお墓参りをしてくださるという、そのお気持ちはもちろんとても嬉しいです。ですがそれは、たいへん危険な行為で、真似をする方が増えても困るのです」
「はい」
なんか……。
本当に、いろいろ大変なんだな。
ごく少数のその人たちのせいで、専称寺も、沖田家の方々も、とても苦労してられるんだ。
「あ……。すみません、話がそれてしまいましたね」
複雑な気持ちで小百合さんを見つめていると、俯いていた顔を上げた彼女と不意に目が合い、驚いた私の顔を見て、彼女は困ったように笑った。
.
最初のコメントを投稿しよう!