8章

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「では、ちょっとこちらに」 そう言って小百合さんが立ち止まった目の前には、小さな襖。 それを開ける彼女に続いて中に入ると、簡素な部屋の真ん中に、何やら服が置いてあった。 「こちらに着替えていただけますか?」 「え……」 着物だった。 「ご存知ないと思いますが、実は講演会の後に、もう一度お墓に戻って来る人は結構いるんです」 「そうなんですか……」 「はい。ですが、もうお墓には入れないわけですから、その方たちには塀の外から拝んでいただくという形になります。ですから、その時に、普通にお墓参りしている藤崎さんの姿を目撃されたら、困るわけなんです」 .
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