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「…………」
なんか、やっぱり申し訳ないな……。
あの人たちは塀の外からで、私だけ中に入れるなんて。
「どうかされましたか?」
俯いていると、心配そうな小百合さんの声が耳に入る。
「あっ、いえ……」
その声に慌てて首を振り、目の前のお墓に向き直る。
「それでは、藤崎さん。私は15分ほど席を外します。また戻って来ますので、それまでここにいてください。お焼香をされる場合は、こちらの線香で」
「わかりました」
線香とライターを手渡され頷くと、小百合さんは来た道を戻って行った。
もしかして、私をお墓まで連れて来てくれるために、わざわざここまで一緒に足を運んで来てくれたのかな。
その徹底された親切心に、思わず感動してしまう。
ふと空を仰ぐと、先程よりも薄暗くなっていた。
私は、手渡された箱の中から二本の線香を取り出し、ライターで火をつけた。
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