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ある日の夕暮れ、夕立が降らず、やはり風が凪いだ日のことである。扇風機の前に空の金盥(カナダライ→コント等で頭に落ちてくるタライ)が、置いてあった。日暮れ近くになり、見知らぬ前掛けを絞めたオジさんが、大きな金挟みに大きな氷を挟み重そうに持ってきたのである。
氷と言っても、3才児の私とかわらない高さだったので、私は氷の柱の様に感じた。
何をするのかと見ていると、その氷を金盥の中に立てて帰って行った。
暫くすると母親が、氷に濡れ手ぬぐいを掛け白い粉を振っていた。
後で知ったことだが、塩で氷の温度を下げ手ぬぐいを氷にくっつけることで、氷が早く溶けてしまわぬ様にするためらしい。
そして氷の後に、扇風機を置き動かす事で、風を冷し過ごし易くしようとの事であった。その日の夕食はとても食が進んだと思う。
金盥の中には氷と一緒にスイカが入っていて、食後に皆で食べたのも覚えている。
ただその後、扇風機の前に氷が置かれた記憶がない。その日限りの事だったのか、何回か同じ事があったのかは定かではない
ただ暫くして、祖母が亡くなり祖父は、福岡の山奥に帰り、19才だった伯母も嫁に行ってしまい。扇風機の前に氷を据える必要が無かったのかもしれない。
親子4人の食事は静かになった。
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