初夏と避暑地

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6月の終わり頃。 気が付けば蝉の鳴く声が聞こえました。いつから始まったのかはわかりません。 掃除時間の五分前、チャイムが鳴ると私は雑巾を手に取り少し急いで教室を出ました。 理科室前廊下の掃除は嫌いではありません。暑さを増してゆくこの頃、一階のあまり日が当たらない理科室は保健室以上に避暑地。 嫌いだったのは清掃担当の先生だけで、それも我慢すれば良いか、と思っていました。 何より急ぐ理由は他にありましたから。いつものことですが、機嫌の悪い担任の顔が見たくなかったのです。 マルチホールを抜け、青々と草木が茂る中庭をガラス越しに見る…。 夏、夏、夏。 私の嫌いな夏がやって来た。 けど、この場所で迎える夏はこれで最後だから去年ほど嫌ではありません。 理科室前廊下は先程のマルチホールとは違い、心地好く涼しかった。 クラスメートの思っていることを代表して言うと、清掃担当が担任の場所から遠ければ遠いほど天国なのです。 理科室前廊下もその一つ。 理科室前の清掃担当は男子から好かれていました。ああ、女子からも好かれています。 学校の中では人気のある先生一位二位辺りじゃないですか。ですから皆からすれば楽しいひとときではないかと。  
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