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その人影は女だった
しかし、女なのに不釣り合いの格好をしていた。
鎧を身に纏い、薙刀を杖代わりにしていた。
肩に矢が刺さっている姿は痛々しい。
そこから滴る血で真っ白な雪がポツポツ赤く染まっていく……
「寒い……うぅ!」
何もないところで躓き倒れてしまった。
起き上がろうとしても、その気力は全くなかった。
「もう……かも……しれない……」
弱々しい小さな声を出し、抵抗する事なく目蓋をゆっくりと閉じ始めた…
(お前は、生きろ!!)
ふいに大切な人の言葉が降ってきて、軽く目を開いた。
(貴男は……私に生……ろと……言っ……。しか……私は……貴男と……生き…かった……義仲様!!)
頬から涙が零れ落ち、彼女の心の叫びは虚空に響いた。
しかし、ただ端に雪が彼女の上に虚しく積もってゆくだけで何も変わらない……。
凍てつくような寒さが濡れた頬を針のように刺すだけ……。
虚ろな瞳はもう光を見いだせない。
そして、何も感じなくなっていった。
そんな彼女の傍に一つの影が現れた。
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