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笠を被り、蓑を纏っている男は、彼女の傍らに立ちしゃがみ込んだ。
慌てず、騒ぎたてる事なく、彼女の頬に軽く触れた。
「大分、冷えていますが……大丈夫そうですね」
死体のように冷えたの頬から手を離すと、彼女の腕を自分の首にかけて、ゆっくりと抱え上げた。
「ウッ……」
矢傷に響いたのか、青白い顔を少し歪め呻き声を発した。
「気を確かに持って下さい。まだ、貴女は天命を全うしていませんよ。巴御前。」
その言葉が彼女……巴御前に聞こえたかどうか、定かではない。
しかし、その事を気にすることなく男は進みだした。
そんな、二人の姿は淡くなり、溶け出すように消えていった。
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