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絵を描いている間画家は私に何も話し掛けなかった。
路上画家は愛想は悪くともコミュニケーションをとりながら絵を描くと思っていた私には意外だった。
更に絵に真剣に取り組むその姿に時折私に見せる鋭い眼光。
いつしか私は本物の絵のモデルの様に動きをピタッと止めて描き終わるのを待つ様になっていた。
30分近く経ちようやく完成したのかスケッチブックから絵を切り離し渡す画家。
その表情は絵を描いている時とは別人の初め私が見たボサッっとしたオヤジに戻っていた。
絵を渡されてしばらくしてからようやくモデルから現実の私に戻った私。
ゆっくりと絵に目を移した。
都会の夜とはいえさすがに絵の細かいタッチまではよく見えない私。
少しでも見える様にと一番明るい所に絵をかざしてみる。
だんだん描かれた絵が鮮明に私の目に入って来る。
『エッ!』
私は絵を見て思わず声をあげてしまった。
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