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『気に要らないかな?』
私の驚きに気付いた画家が私に話し掛けて来た。
『気に要らなくはないけど…』
私は言葉を濁した。
『じゃあ…どう?』
画家は評価が気になるらしい。
正直なこの絵に対する感想は私にとっては
‘恥ずかしい’
だった。
なぜなら絵の私は素人の私が見てもあまりにもかわいくなく酷い表情をしていたからであった。
多分元気な私なら画家に散々文句を行って絵を叩き付けて帰っただろう。
でも絵を見て私は怒りは不思議と感じなく恥ずかしいだけだった。
それもあり私は画家の質問に答えず無言を貫く。
『やっぱ駄目ですか…』
無言の私を見て画家は自分で結果を出してうつ向く。
私はそれに対して何も言わない。
画家は画材を再び片付けだす。
私はまだ絵を見つめたまま動かない。
画材の片付けが終わった画家は席を立ち私を再び見る。
私はここでお金を渡して席を立った。
画家は無言で最後に私の座った席を片付けると…
『ありがとうね』
そう一言行って私の元から立ち去って行ったのであった。
私もしばらくしてから絵を鞄にしまい家に向かう電車へと乗って帰ったのだった。
家に帰って私は再び絵を見た。
今の自分の辛さ、切なさ、情けなさが全て描かれまるでヌードにされたように恥ずかしくなるその絵を…
絵の右隅に小さく描かれた名前「博司」
私をここまで短い期間で見抜いたこの画家に私はこの時逆に興味を持ったのだった。
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