マーティランド大渓谷防衛戦

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マーティランド大渓谷。 シャンプリス王国の北部にあるドーナツのような独特な形をした渓谷群 遥か昔から存在する歴史ある渓谷だった。 シャンプリスとヨーガンドが戦争を始め、このマーティランド城が建城される以前は、オアシスから水が通い、緑豊かで、生態系も発達していた。 この渓谷にしか生息していない生物もいたようだ。 しかし、今となっては 水は枯れ、見て取れる緑は短い雑草が時折ポツポツとあるばかり。 当然生物は見る影もなくなった。 いつしか、ここは 渓谷と言うより峡谷になってしまった。 理由は簡単だ。 戦争が始まり、シャンプリスがこの渓谷の内地に城を建てた。 すると、当然ヨーガンドはその城を落とそうとやってくる。 渓谷は足場や地形の利をシャンプリス軍にもたらす。 すると戦争は自然と渓谷の中で行われるようになった。 戦いには食糧が必要だ。 空腹のまま戦い続けられる騎士など存在しない。 食糧が尽きれば渓谷の中にある食べられるものを手に入れるしかない。 食べられるものはどんどんとられていった。 それは食物連鎖の関係を壊し、生態系を狂わせた。 また、戦う上で邪魔となる木々は次々と切られたり、焼かれた。 木の数が減れば日光が地を直接照らし、水はみるみるうちに干上がる。 水を失った木や生物は次々と死滅していった。 そして、その果てに この峡谷は生まれてしまったのであった。 今や、昔の自然豊かなマーティランド大渓谷は見る影もなくなった。 しかし、シャンプリスの人々はまたいつかその大渓谷が蘇ると信じて、今もなおマーティランド大渓谷と呼んでいるのである。 また、このマーティランド大渓谷のおかげで、これまで幾度のヨーガンドの侵攻を食い止めていた。 マーティランド城の難攻不落の真意は渓谷にあり。と言われるほどだ。 それもあり、この悲惨な姿となってしまったこの渓谷も国民から見れば、その姿さえ美しく見えるのだ。 シャンプリスの民でこの渓谷を愛さない者はいないだろう。
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