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「ところで、先ほどは何を争っておられたのですか?」
フランが、ふと思った事を口にする。たくさん話して、もっと相手のことを良く知りたかったから。
「まぁ、ちょっとした褒美争いのようなものさ。俺がとった褒美を渡す渡さないでもめていたんだ。」
きまり悪そうな顔で説明する。
「褒美?」
「おれたち剣士は、ひとを守ったり、怪物を倒したりしたときに教会から褒美がもらえるんだ。たいていの剣士はそれで生活をしている。」
「勇羅さんがもらった褒美をなぜ、他の人に渡さなければならないんですか。」
「俺は、一人では怪物を倒すことが出来なかった。」
勇羅の瞳に影がさした。その瞳はどこかさみしそうで、まるで曇った空のよう。
「あいつらに手を貸してもらう気なんてなかったんだが、結局俺一人の力では勝てなかったんだ。」
俯く勇羅。その姿にフランは何も言えなくなった。
「…」
フランも少し俯き、それに気付いた勇羅は努めて明るく
「まぁ、そういうわけだ。」
といって笑った。フランはそんな笑顔を見て、もっと勇羅について知っていこうと心に誓った。
好きになった人の弱さを受け止めたい。
そう思った。
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