空色のタクシー

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ザァァァァ… ある日の仕事帰り、突然雨が降り出した。 「あ~…雨降ってきちゃった…」 私は1人でポツリとそう呟いた。 すると止めたわけでもないのに、私の目の前に一台のタクシーが停まった。 見たことのない、綺麗な空色のタクシー。 傘をもっていなかった私は、すぐにそのタクシーに乗り込んだ。 車内中、太陽の、暖かな良い匂いでいっぱいだ。 不思議なタクシー… 運転手は、帽子を深く被っていて顔がよく見えない。 まだ行き先を告げてもいないのに、タクシーは夜の街を走り出した。 私は何故か、行き先を告げる気にも聞く気にもならず、ただ黙って窓の外を眺めていた。 いつの間にか雨は止んでいた。夜空には燃えるように真っ赤な月だけが不気味に輝いている。 けれど、私はその赤い月に、不思議な魅力を感じた。
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