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昼休みの後の気だるい授業は
2組と合同の体育だった。
身を切るような冷たい空気が張り詰める体育館を、ダァムダァムと空気の抜けたバスケットボールが物憂げに弾んでいる。
運動音痴に定評のあるわたしは早々に引き揚げて、素直ちゃんの活躍を見守ることにした。
「小早川、部活とかしないの?」
体育館の隅っこで膝を抱えているわたしの隣に、
やる気の無さに定評のある柏木くんがやってきて腰かけた。
「うん」
「しようよ、吹奏楽」
「楽譜とか音符とかわかんないもん」
「オレが教えるよ」
「楽器なにしてるんだっけ?」
「トランペット。
そうだ、今日見学においでよ。
黒木さんも誘ってさ」
黒木、は素直ちゃんの苗字だ。
「…わたしを釣れば、素直ちゃんまでついてくるとか思ってるなら大間違いだよ」
「ええええ…」
正直な奴だ。
「素直ちゃん、柏木くんのこと嫌いだもん」
「なんで嫌うの?
オレかっこいいよ?」
「顔だけは、ね。
素直ちゃんは何時いかなる時も一生懸命な人が好きだよ」
「オレ一生懸命演奏してるよ?」
「…素直ちゃんは一生懸命バスケしてる人が好きだよ」
「ちょっと試合出てくる」
「いってらっしゃい」
「……ていうか小早川、オレを追っ払いたいだけだよね?」
ご明察。
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