歓迎された月曜日についての考察

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「パーカーがブカブカすぎてなんかエロい!!」 嗚呼、この人……。 「まあ、僕が隣にいれば襲われる心配もないし大丈…いやでも他人に見せたくないな…でも…」 なにやらぶつぶつ言っているシヲさんを置いて、わたしはすたすたと校門を出た。 「あ!! ちょっと待ちなさい!! ひとりで歩いちゃ駄目だってば!!」 慌ててついてくるシヲさん。 なんだか、いつもと立場が逆転してるみたいで気持ちいい。 「あのね、謳子ちゃんはいま相当卑猥な格好してるんだよ? 一人で歩いてたら即野獣の餌食…あ、ばいばーい」 シヲさんは群衆に手を振り返しながらわたしの頭をこんこんと小突いた。 「大丈夫だよ。 わたしが男の人だったら、絶対わたしよりシヲさんを襲うもん」 「それもそうか」 シヲさんは真顔で頷いた。 「でも、家に着くまでは絶対僕から離れちゃ駄目だよ。 そうだっ!手、繋ごう?」 一瞬胸が高鳴ったけれど、すぐに素直ちゃんの言葉がフラッシュバックして喜びがくしゅっとしぼんだ。 「やだ…」 「強制」 有無をいわさずからませてくるシヲさんの白い指を見て、素直ちゃんのことを思い出す。 ちゃんと、手を冷やしただろうか? 火傷が痕になったりはしないだろうか? 「落ち込んでるね」 横断歩道の信号待ちでシヲさんは繋いだ手をぶらぶらと揺すった。 「さっきの子?喧嘩したの?」 何も言わずに俯くわたしの口に、ココアシガレットが突っ込まれた。 「僕のこと?」 遠からず、近からずだ。 素直ちゃんに言われたことをそのままシヲさんに伝えるなんてことは、とてもできない。 「図星みたいだね」 シヲさんはふふ、と笑った。 「でも、シヲさんがどんな人かは話してたし、わたしのお父さんの仕事だって理解してくれてたんだよ…」 わたしは慌てて言った。 何に向かってかは分からないけど、とにかく何かに言い訳したかった。 本当は、シヲさんが予告もなしに学校に来たせいだよって言いたかったけど、そんなの、どうしようもなく最低だ。 「話を聞くのと実際に見るのとでは違うからね。 僕らみたいな存在を毛嫌いして否定する人種はそうめずらしくはないよ。 謳子ちゃんだってわかってるでしょ?経験で」
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