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わたしはオカマ二人の呵々大笑に聊かうんざりしながら目玉焼きを頬張る。
「そうだね。僕は僕だ」
「謳子のくせに真理をついたわね」
「もう。二人して馬鹿にして…」
お父さんはわたしに牛乳を手渡すと、テーブルについて朝刊を開いた。
「…ま、お客さまってのは大げさだけど、シヲにはあんまり悪いもの食べさせたくないのよ。
ただでさえ偏った食生活送ってるんだからね。
指名ナンバー1に倒れられちゃ困るのよ」
「五月さんは心配性だなー。
僕は倒れたりしないよー」
「…ったく。
四の五の言わず、その銜えてるキャンデーを置いて、アタシの料理を食べなさい」
「あ、忘れてた」
シヲさんはいつも口に何かを銜えている。
それは棒キャンデーであったり野菜スティックであったりシャボン玉のアレであったりマドラーであったり吹き流しであったり鉛筆であったりココアシガレットであったりして実に多種多様なのだ。
一度、どうして?って訊いたら
『口寂しいから』
という微妙な答えが返ってきた。
シヲさんは、少し不思議な人。
「んー…これ、どうしよう…」
食べかけのキャンデーを見詰めて、シヲさんは困ったように首を傾げている。
「どうしたの?」
訊ねてみると、シヲさんは嬉々としてわたしの口にキャンデーをつっこんできた。
「むぐぅ!!」
「すぐ食べちゃうからちょっと預かっといて?」
キャンデーは、桃の味。
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