告別と誓いと

7/11
前へ
/227ページ
次へ
美優の輝くばかりの活躍にちょっと嫉妬して。 自分が惨めに感じて本気でやめようかと考えていたとき、俺を支えてくれたのが先生だ。 『タク君にしか出来ないことをやればいい』 迷走に走っていた俺に投げかけてくれた言葉。 トップ選手に追いつこうと無謀な練習をしていた俺に、先生がポツリと独り言のように呟いたのだ。 本当に、本当にポツリと呟いただけなのに、その言葉は心の奥底にまで響き渡った。 自分と他者を比較して劣等感に駆られていた俺に、先生の言葉は一筋の光を灯らしたのだ。 個人競技において一番のライバルは自分自身。 自分を超えなければ良い結果が得られるはずがない。 俺にしか出来ないこと。自分を超える。 他者と争うんじゃなくて、自分にしか表現できない世界を広げればいい。 そのことを先生が再認識させてくれていなかったら、大怪我をして今の俺は存在しなかったかもしれない。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加