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バラのアーチをくぐって、大慌てで中庭を抜けた俺は、膝からその場にへたり込んだ。
はぁ……
危なかった。
静まれ、心臓。
『気持ちわるい』
『おかしいよ、絶対』
あれをまた、繰り返すのはごめんだ。
ふいに不安に飲み込まれそうになって、自分の体を自分で抱き締めた。
立ち上がる気力が起きずに暫しの間そうしていると、
「君、どうした。気分でも悪いのか?」
本日2度目の優しい声掛けを頂いた。
俺、どんだけ人に心配されてるんだよ。
しかも1日24時間あるうちの10分足らずで2回。
ホント、どんだけなの。
「い、いぇっ…俺は」
内心へこみながらも笑顔を作って、声のした方を仰ぎ見た。
その先にいたのは、
「お。誰かと思ったらまぁ…」
「!」
「どうしたよ、みぃ。今にも死にそうなツラして」
唯一、俺を“みぃ”と呼ぶ人。
「…おにーさんに話してみ?」
大切な大切な、俺の幼なじみで担任の遠江 暁那だった。
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