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『魔の紙』…中間考査の順位表を見終えて、いつも穏やかな神津が笑いながら血相を変えていく。
「………悠司くん。」
「これは……そのぉ…」
ビビって声が出ない。
「コレ、どういうこと…かなぁ?悠司くん?」
俺の身長は決して低くはないが、クラスどころか学年で一番背の高い神津とイスに座った状態の俺ではどうやっても俺が首をクイっと上にあげなければならない。
そのくらいの差から、ズンと立って見下ろす彼は、マジメに恐ろしかった。
いくら満面の笑みを浮かべていても、なんだか背後にスタンドという鬼のような…うん、化身が見える。
……でっけぇ…
「…ヤマが…外れた。」これが俺の精一杯の言い訳。
「全体的に満遍なく勉強したよね?」神津が喋ると共にスタンドも口をパクパクさせている(ように見える)。
「頭の中が…真っ白だった。」
それを聞いた神津は、深いため息を吐く。
テスト中頭の中が真っ白だった事はハッキリ覚えていた。
真っ白過ぎるその脳内は手持ちポケモンを全て倒され、ポケモンセンターに直行するトレーナーの如く敗北感に満ちていた…
…そう、テストの時間に既にダメだと分かっていたんだ。「このテストオワタ\(^O^)/」…と。
今朝ツイッターでテンションアゲアゲで呟いていた俺。
友人の多くに見られた中、「言ったな?ビリだったら明日の昼休み100円プリンよこせw」とフォローするヤツもいた。
…分かっていてなぜつぶやいたんだ俺!!
頭の中で「後悔」の二文字がポップコーンの如くぽぽぽぽーんと跳ねている。
虚無感に満ちた俺の顔を神津はガッチリ掴み、無理やり目線から逃れようとする俺の目線を正面上60°まで動かす。俺バッチリ目が合ってるなう(ry
「悠司くん、このまま進級できなかったらどうするの?去年は一学期こそバリバリトップだったから進級出来たっていうのに…」
「そうだぜ!ユージは出来るヤツだったじゃねえか!悪い女にでも引っかかって勉強できなくなったか?」
神津と谷幡が次々と俺に言葉で刺してくる。しかし悪い女に引っかかってはいない。…正直話してくれる女もいない。
確かに、「昔」は勉強できた。
まあ、昔の話だから今は関係無いけんだがな!
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