悠司は今度も赤点らしい

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今の自分は正真正銘の落ちこぼれだった。 分かり易く言えば、どこぞのゼミの勧誘マンガに出てくる主人公ようなキャラだ。 帰り道谷幡と神津に散々グチグチ言われた後、俺は駅で彼らと別れ電車に乗った。 「ちくしょー…今回なんでどの教科も平均たけーんだよ…」 吊革につかまり、ぼんやり過去を思い返す。 《天寺(アマデラ)くんって勉強できる人じゃなかったの?》 去年の二学期にいわれた女学級委員の言葉。会心の一撃。 《おいおいユージ!数Ⅰお前も赤点かぁ?よかった赤点仲間がいて~!》 これは三学期に谷幡に言われた言葉。クリティカルヒット。 《天寺悠司!このままでは進学はおろか進級もできないぞ!》 一時間ほど前先生に言われた言葉。きゅうしょに あたった! 本当に何やってるんだろうな…俺… 『まもなく中目黒、中目黒…』 イカンイカン、…電車のアナウンスで目が覚める。寝てたわけではないんだけど、最近ずっと頭がぼんやりする事があり、アホづらになっていると谷幡に笑われた。 電車が止まり、ドアが開いて、閉まる。再び走り出す電車。 …もし、願いが叶うなら。 俺はどこか遠い知らない世界に行ってしまいたい。 願わくば、ドラクエとかテイルズにありそうなほんわかファンタジー世界。あ~でも現代的でいいからポケモンに囲まれたりできたら幸せだな… 『次は代官山、代官山…』 現実逃避している自分が情けないけど、本当に知らない世界に飛んでいってしまいたかった。 勉強できなくなったからじゃない。自分の中の「何か」が、どんどんダメになっていく事が、…知ってる人に見られたく無かった。 あの通り魔の犯人も、誰も知らないような世界に逃げ込んでるから捕まらないのかな…? イカンイカン、やめるんだ厨二発想!!頭を左右にグワングワン振り、現実と向き合う。(本当にできているか分からないが) 去年新しく地下に直通したこの電車はそのまま地下に潜る。 都内でもかなり深い所を走るこの電車。 地下に入って、窓に自分の姿が映る。 その姿を見て、…俺は恥ずかしながら叫んでしまった。
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