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「…おっさん達本当にサンタとトナカイかよ…。
すげー。小さい頃はどんななんだろうって思ってたけど実はどっちも普通なんだな。」
ワゴン車の後部座席に積まれた大量のプレゼントに埋もれつつ、青年こと川島 敦志(カワシマ アツシ)が感嘆を洩らす。
「サンタとトナカイに普通って言うな。結構傷つくんだ。俺たちのハートは意外と脆(モロ)いんだから。ガラスのハートなんだよ。」
別に威張るような所はないが胸を張って言い放つ黒須の顔には傷がまた一つ増えていた。
黒須の顔の傷の数=田中井の不信感とするならばこれは相当なものになるだろう。
「そんなことよりっ!」
サンタとトナカイのギクシャクした関係なんざ知ったことではないと言わんばかりに川島が叫ぶ。
「頼む、おっさん達!今すぐ光の丘公園に向かってくれ!
彼女を待たせてるんだ!」
「サンタをパシリに使うたぁ何事かと思えば彼女待たせてるだぁ?
俺だって家で嫁さん待たせてんだ。隣にいる田中なのか中井なのか分からねぇ暴力トナカイだって出来たてホヤホヤの彼女待たせて仕事してんだ。
大体俺たちは小さい子供に夢を与える仕事してんだ。
お前のような純粋で綺麗な夢を見れなくなった汚れた大人にゃ夢を与える義理なんてないんだよ。
分かったらとっとと降りてタクシーでも探しな。」
しっしっと追い払うような手つきをしながら黒須は川島に言い放つ。
それにしても後半は酷い言いようである。
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