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『で、次はこの家で良いんだな?』
車のエンジンを切りながら田中井が黒須に尋ねる。
その頬には絆創膏が目立つ。
「あぁ…次はこの家の一人息子の実(ミノル)君にガンダモのプラモデルを届けることになってる」
包装されたプレゼントの小包を抱えた黒須が【菊池】と書かれた表札前に立つ
その顔には痣や出血の跡がある。
いくら一般人には見えないからとはいえ、そんな顔で子供の家を回るのはサンタとしては問題アリなのではと思うが黒須は気にしていないようだ。
そして頭にはトレードマークの帽子がない。
帽子がない黒須は柄の悪そうなただのおっさんである。
『うおっ!』
助手席に置き去りにされた帽子を田中井が見つけ、慌てて黒須を呼び戻そうとするが時すでに遅し。
黒須はすでに菊池家の壁をよじ登っている。
もう少しで2階の窓に手が届く…
そう黒須が思った刹那のこと…
目の前の窓がガラッと音を立てて開いたのだった。
「あの、どちら様ですか?」
真冬の気温にも負けないくらい凍てついた眼差しで黒須を見つめるのは
菊池家の一人息子の実君ではなく、一人の少女だった。
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