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シンと静まり返った菊池家の和室で正座する黒須と田中井。
黒須は膝の上で赤い帽子を握りしめ、田中井の焦げ茶のスーツには先ほどまではなかった自身の名が書かれたネームプレートがあった。
その2人の目の前には和風の机の前で腕を組む一人の少女がいた。片手には固定電話の子機が握られている。
『まず自己紹介させて頂きますと私トナカイを務めております田中井です。そしてこっちの赤いのが黒須 三汰と申しまして、サンタクロースをしております。』
手慣れた様子でスーツの中から名刺入れを取り出し少女の前に名刺を差し出す。
「…クリスマスイブに人の家に不法侵入するだけあって言い訳も一捻りしてあるんですね?」
【(株)せんと・にこらうす社 トナカイ課班長 田中井 鹿雄】と書かれた名刺を見て鼻で笑う少女。
『嘘なんかじゃありませんよ。我々は菊池 実君にガンダモを届けにやって来たんですから。』
そう言いながら黒須を小突くと今まで沈黙を通してきた黒須がおずおずと【菊池 実君へ】と書かれた小包を机の上に差し出した。
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