5人が本棚に入れています
本棚に追加
退紅
夢のような時間はもう
幻のように手に届かない
風に散りゆく 記憶のかけら
そっと つかまえて
冷たい雪の下で
陽射しを待つ蕾のように
暖めてきた想い
嘘か本物か 何度も確かめて
さりげなく触れた指が
肌に残した感触
今にも外れてしまいそうな
長く閉ざされた鍵
誰かの代わりじゃなく
私だけのために
笑って
泣いて
怒ってよ
夢のような時間はすぐに
幻のように弾けた
はっと顔をあげれば
はらはらと 舞い散る記憶
理性がさとす言葉も
流れ出した想い 止められない
秘めた熱に満ちる体を
染めていく 花の香り
許されないなら せめて
風に散りゆく 君の記憶
そっと つかまえて
.
最初のコメントを投稿しよう!