退紅

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退紅

夢のような時間はもう 幻のように手に届かない 風に散りゆく 記憶のかけら そっと つかまえて 冷たい雪の下で 陽射しを待つ蕾のように 暖めてきた想い 嘘か本物か 何度も確かめて さりげなく触れた指が 肌に残した感触 今にも外れてしまいそうな 長く閉ざされた鍵 誰かの代わりじゃなく 私だけのために 笑って 泣いて 怒ってよ 夢のような時間はすぐに 幻のように弾けた はっと顔をあげれば はらはらと 舞い散る記憶 理性がさとす言葉も 流れ出した想い 止められない 秘めた熱に満ちる体を 染めていく 花の香り 許されないなら せめて 風に散りゆく 君の記憶 そっと つかまえて .
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