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見上げた空に太陽はなかった。
それでも男は、眩しそうに目を細めていた。けれど、それは自らが招いた惨状から目を背けていただけだった。
足元に転がる死体の群れ。脳漿をぶちまけた頭、焼き尽くされた内臓、両手は二度と出会うことなく弾け飛び、足は逆さの墓標となって立っていた。
全ての物が意思を失っていても、無数の死者の瞳だけは彼を責め続けていた。
彼の手に握り締められた剣が、憎悪の炎を吐き出していた。それは、人々を照らす太陽の炎となるはずだった。
その力で護りたいと願った者を忘れはしない。共に旅した日々も、あの笑顔も。
いずれ訪れる追跡者を待ち望んでいる自分を嘲笑して。
ふいに背中の傷跡が疼き出し、振り返った。
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