必然であること

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 ルーザは、袈裟斬りに打ち下ろした剣を躱されるが、それを逆に切り返して腹部を狙う。  しかし、その剣は虚しく空を切った。  そこから、左足を軸とし回し蹴りを放ち、さらに連続して遠心力を利用し水平に斬り払う。その流れるような連続攻撃を、挑戦者は嘲笑するかのように、わずかな足さばきだけで回避する。  ルーザは、苛立っていた。自分を打ち倒せる者などいないという確かな自信があった。それゆえに、剣は重く感じられた。  彼が、怒りに身を任せ渾身の一撃を上段から打ち下ろす。  刹那。  剣は中程で折れ、彼は後方に吹き飛ばされていた。気付いた時には床に這い蹲り、苦痛の呻き声を挙げていていた。その痛みだけが、何らかの攻撃を受けたことを証明していた。  挑戦者は、ルーザを居丈高に見下ろし、最も認めたくない言葉を言い放つ。 「お前は弱い」  口の中に流れ込む鉄の味が何よりも苦く、観衆のどよめきが耳障りだった。
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