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「それより、そろそろ来る頃だな」
「あァ」
そう言った途端に屋上に通じる階段から、さながら怪獣の大行進のような音がしてくる。
いや、なんかもっとすごい奴。
ドアを蹴破るぐらいの勢いで現れた少女は、口を裂けるのではないかと心配になるくらい大きく開けて怒鳴った。
「コラッ! もう授業が始まるぞっ」
彼女の肩より少し長い茶色がかったブロンドの髪が、午後の陽光に照らされて輝いている。
太陽のように大きな瞳には、怒りの炎が燃え上がっている、気がする。
活発そうな彼女の名はファイン。
それでいて、上品な雰囲気を持っているのは、エルグランテ家という高貴な血筋ゆえだろう。
「ホラッ! 行くよ!」
ファインはルーザの手を引っ張った。千切れるくらいに。
「痛い。お前は力が強すぎるんだよ」
「なんだってェ」
二人の様子を眺めていたヴァルサーは、楽しげに笑っていた。青空が良く似合う笑顔だ。
「早くしなさいよ」
「次の授業、何?」
「神学だよ」
ルーザとヴァルサーは、顔を向かい合わせて嫌そうな顔をしていた。理由はまるで違うのだが。
ルーザは、めんどくさそうにファインについていく。ヴァルサーが後ろに続く。
「ファイン」
どちらが呼んだかは分からない。けれど、振り向いた彼女の笑顔は二人に降り注いだ。
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