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 ――僕はいらない存在なのかもしれない――  いつ人が遊びに来ても大丈夫なように掃除をした部屋に一人でいると、いつもさみしさと共にそんな想いがこみ上げてくる。  これは自己否定といった強いベクトルではなくて、もっとこう、郷愁じみた想い。  ほんの数年前まで僕は友達の中心にいて、下らない冗談で話に花を咲かせていた。話術がどうこう、突っ込みがどうこうと美学を持ちながらもそれに自信と誇りさえ持っていた。  友人と集う場所は大抵この家。学校の近くにあり、よく帰りに立ち寄り深夜まで馬鹿話をしたものだ。時には青春なんて言葉がぴったりな恋愛話や、将来の不安を語らうそんな場所であった。  そして、話の輪には勿論僕がいた。  それがどうだろうか。今となっては誰も訪れる事の無いこの部屋。そこに僕だけがいる。  完全にツケが回ってきた。  僕が友達に対してとった態度、それの報いだ。  僕は話題の中心に居ながらも、常に壁を気付いて本心を打ち明けないでいた。イイ格好ばかりしていたのだ。弁明はいくらでもできよう。  ――笑っていたかった――  ――真面目な話では笑顔が減る――  それが自分自身の本心だとは今でも信じている。でもそれは、あくまで口実だったのかもしれない。自分を隠すための。  自分の核への最後の一歩、それを踏みこませないのは簡単だった。そこに至る前に『落ち』をつけてしまえばよかった。それでみんな笑って終わる。  確かにそれだけで済まない時だってあったが、その時はその時。今度は先にこちらのカードの切り札以外を見せてしまえばよい。それだけ。そうすれば建前上は正直に打ち明けたという形がとれた。あなたを信頼しているのでこんなにもさらけ出しているんですよとポーズがとれた。そうすれば誰もが疑うことなくそれ以上裏を勘ぐらないでもらえた。  やはり僕は人にイイ格好ばかり見せていたのだ……。
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