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「ゆ、づき…ゆぢゅ、き…!」
「……泣くなよ…大丈夫だから」
視界が赤く染まってる。何でこんなことになってるんだっけ…? たしか…僕は家族皆で夕飯を食べに行って…その後は…。
その後は…思い出せない…。
周りを見れば車が燃えている。何台も、何台も壊れているし燃えている。
「…そうだ、父さんと母さんは…?」
「……った…」
よく聞こえなかった。
それとも聞きたくなかったのかもしれない。
「……死んじゃった」
「っ…!」
聞きたくなかったのに、聞いてしまった。…そっか、死んじゃったのか、父さんと母さん。
不思議と涙は出なかった。ただ、何かが抜け落ちた気がした。
「…ごめん、なさい…」
それだけを呟いて、泣きじゃくる彩月の頭を撫でる。
これだけ凄い事故なんだ、すぐに警察とか来るだろう。電柱を背凭れにしてそんなことを考えていると、フッと目の前が暗くなった。顔を上げると、こんな場所には似合わない白い着物を着た女性がいた。
その人は僕をニヤニヤ見ながら、頭を撫でてきた。
「お主は運がいいのう…。こんなところで儂に出遭うとは」
「…誰、なの」
「通りすがりの化物じゃよ。…お主、何か望みはあるか?」
唐突に彼女はそう言った。
どういうことか考える前に僕の口は動いていた。
「――――」
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