0人が本棚に入れています
本棚に追加
「優月優月、今日が何の日か分かるよね?」
隣でスキップをしながら歩く妹にそう言われ、僕は未だに覚醒しきっていない頭で考える。今日…わざわざ言うくらいだし、きっと何かの記念日だ。誰かの誕生日ってこともあり得るが、誰のだ? 僕ではないし、美空さんでもない。じゃあ誰の…?
「今日は食堂のデザート類が半額になるスペシャルデイなんだよ。心が弾むよね」
「…あぁ、そんなことか」
「そんなことじゃないよ! 優月はそういうことを言うから日菜ちゃんに怒られるんだよ?」
「なんでここであいつが出てくる? って、あ、まずい…」
「どうしたの? 財布なら私が持ってるよ?」
「なんで僕の財布をお前が持ってるんだよ? …今日は日菜と一緒に行くことになってたんだよ」
「あっちゃあ…御愁傷様です」
合掌して頭を下げる彩月にちょっとイラッとした。文句を言おうと口を開きかけた時、何かがこっちに向かって走ってきたのが見えた。
「ゆーづーきーぃ!」
「げっ、日菜…さん!?」
噂をすればなんとやら。僕の幼なじみである赤嶺日菜が、追い掛けてきた。トレードマークとも言える、赤いポニーテールが左右に揺れている。かなり怒っているようだ。
日菜は僕の前まで来ると、僕の肩を左手で掴んだ。骨がミシミシ鳴っている。
「ねえ優月、私の言いたいこと、分かる?」
にっこり笑ってそう言う日菜を凄く怖く思った。
「おはよう…ございます…?」
「ハズレ、罰ゲーム♪」
言いたかった事はね、と日菜は囁くように呟き、右手を振りかぶる。
「なんで先に行ってるのよこのバカぁーー!!」
「あぐぁっ!」
朝っぱらから地面を転げ回るとは思わなかった。というか痛い、激痛。
「フンッ、バカ優月」
「あわわっ、待ってよ日菜ちゃん!」
薄情な妹は怒り心頭の幼なじみの後を追って学校に向かって走っていった。
「いってぇ…殴ることはないだろ…」
よろよろ立ち上がり、制服の汚れを払い、殴られた所を擦りながら僕も学校に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!