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シルビアが密かに伝書鳩でランフィス王国に手紙を出して2日が経った頃、国王から王女へ呼び出しがあった。
この頃には、国王の容態は悪くなる一方で、すっかり寝込んでしまう状態になっていた。
国王は王子の姿で部屋に来るようにとシルビアに伝えた。彼はそんな事が初めてで底知れぬ不安を感じた。
王の部屋まで布で身を隠し、護衛隊に囲まれてなんとか誰にも見つからず部屋に着いた。ドアの前には家来は誰もいなかった。
ノックをする。
「シルビアでございます。」
「入れ。」
王の声が聞こえ、中に入った。
「失礼致します。」
中に入ると、デイヴィッドがおり、他の家来はいなかった。
シルビアは王のベッドの横に来た。
「父上、お呼びでしょうか。」
王女は布を取って王子の姿を見せる。
「おお・・・!このような王子の姿をきちんと見るのは初めてだ・・・。」
そう言って、国王は涙を流した。
「父上?」
「シルビアよ・・・。私はもうそんなに長くない・・・。」
「!父上!」
「私には、分かる・・・。だから、思い残していた事をやろうと思ってな・・・。」
「何をおっしゃいます!そんな、遺言めいた事・・・!」
「私は・・・お前に随分酷い事をしてきた。何の罪も無いお前を、女だと偽って育てた・・・。私のせいで、お前の母は亡くなった・・・。お前から母を奪ってしまった・・・。どんなにか、私が憎くて辛い思いをしただろう・・・。」
「父上・・・!!」
シルビアの目から涙が流れる。
「私は・・・酷い父親だった・・・。お前の父親として失格だ・・・。今まで、父親として何もしてやれなかったが、これだけは、しておきたかった・・・。」
そう言って、国王はベッドの横の引き出しを開け、白い紙の巻物を取り出した。
「?」
「これを・・・お前に・・・。」
国王はその巻物をシルビアに手渡した。
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