命の名

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「ジラクよ・・・。私は今遺言書をしたためておる。」 「父上!何を・・・」 「それには私の今までのお前に対する酷い仕打ちとお前が実は王子だったと、国民を欺いた事への謝罪が書かれている。そして、次期国王はお前だという事を記した。」 「なっ!!父上、怪文書に惑わされたのですか!?」 「私の意志だ。確かに、怪文書は改めてお前が世継ぎである事を考えるきっかけになったが・・・。お前は、れっきとした、私とセシリアの間に生まれた正当な王位継承者だ。恐れずとも良い。お前が王子に戻る時、障壁にならぬよう、お前が王女としていたのは私のせいである事を明記してある。」 「・・・兄上は、どうなるのですか?皆から次期国王と見られていて、いきなり私が王子だと出て来たら・・・兄上がおかわいそうではありませんか!父上は私達を都合のいいように扱われる。都合が悪いから、最初私を女として育てられ、今度は急に男として世継ぎになれなどと!私達は操り人形ではありません!」 シルビアは感情が高ぶって自分でもどうしようもできなかった。 「・・・申し訳ございません。言葉が過ぎました。」 「お前の言う通りだ。私は自分勝手だった。お前が生まれた時、胸を張ってお前が次期国王だと言うべきだったのに、私の弱さからお前達兄弟を傷付ける結果になってしまった・・・。本当にすまなかった・・・。」 「・・・。」 シルビアは国王から目を反らした。 「シルビア様。いえ、ジラク様。差し出がましい事を申しますが、王様は、簡単にあなた様を王女様として育てようと決められたわけではございません。深く悩まれたのです。この国の安定の為に、お心を砕かれていたのです。そこは、御理解頂きますよう・・・。」 デイヴィッドが言った。 「・・・それは、分かっている。分かっているからこそ・・・この行き場の無い気持ちをどうすればいいのか分からない・・・!!」 シルビアの姿が痛々しくて、護衛隊の列にいたレイチェルはすぐにでも手を握って落ち着かせたい気持ちになったが、国王やデイヴィッド、他の隊員達の手前、ぐっとこらえた。
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