―喰らう者の話し―

10/18
前へ
/88ページ
次へ
気がつくと辺りは血で赤く、赤く染まっていた。赤だけではないが…それは研究員の腕や脚だろう。 一体何が起こったと言うのだろうか…少しずつ思い返してみる。 俺は確か…研究の材料にされて、麻酔で眠らされた。 多分ここは研究室なのだろう。見回すと様々な機材がある。全て、血で染まっているが… と、ここで俺は気が付いた。いろいろと違和感がある。 とりあえず前足を見てみる。 いつもの狼の足でも、人間の手でもなかった。 鱗に覆われた…ドラゴンの前足だった。 ありえない。そう思いたくても、現に今、起きているのだから…ありえる。 ドラゴンの…いや、俺の爪には血がべっとりとついていた。 ふと、ガラスに目が行く。 見紛う事なきドラゴンがガラスに映っていた。 口に血がついている。想像したくなかったが……俺は、研究員を喰ってしまったようだ… 獣人の禁忌を犯してしまった…
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加