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ウルもかなり成長して、狩りもできるようになった頃だ……
その日は、満月――
崖の近くの岩場に座って満月を見ていたら、ウルが森から出て来た。
ウル「兄さん…」
「なんだ?」
ウル「しくじった…」
「何を?」
ウル「猟師の罠にうっかりかかっちゃって…」
「ああなるほど…痛くないか?」
ウル「今はもう平気。」
「そうか、ならよかった。」
ウル「良くないよ…だって獲物に逃げられちゃった……」
「あのな…いつも言ってるだろ?獲物を逃しても、自分が生きてればいずれなんとかなるから…良いんだって。ほら、俺のやるから食え。」
ウル「分かったよ。でも…兄さん、最近何も食べてないじゃないか…」
「俺は大丈夫だから、ほら、食いな。」
兎をウルの方へ放ってやる。ウルはそれをキャッチした。
ウル「でも…兄さん、ホントに最近なにも食べてないし…」
そう、確かに俺はここ数日、何も食っていない。
「最近、食欲が出ないんだ。残したらもったいないから、お前にやる、それだけだ。」
ウル「分かったよ……」
そう言って、ウルは兎を食い始める。
俺は、少し離れた場所で腹ばいになってそれを見ていた。
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