―喰らう者の話し―

15/18
前へ
/88ページ
次へ
ウルもかなり成長して、狩りもできるようになった頃だ…… その日は、満月―― 崖の近くの岩場に座って満月を見ていたら、ウルが森から出て来た。 ウル「兄さん…」 「なんだ?」 ウル「しくじった…」 「何を?」 ウル「猟師の罠にうっかりかかっちゃって…」 「ああなるほど…痛くないか?」 ウル「今はもう平気。」 「そうか、ならよかった。」 ウル「良くないよ…だって獲物に逃げられちゃった……」 「あのな…いつも言ってるだろ?獲物を逃しても、自分が生きてればいずれなんとかなるから…良いんだって。ほら、俺のやるから食え。」 ウル「分かったよ。でも…兄さん、最近何も食べてないじゃないか…」 「俺は大丈夫だから、ほら、食いな。」 兎をウルの方へ放ってやる。ウルはそれをキャッチした。 ウル「でも…兄さん、ホントに最近なにも食べてないし…」 そう、確かに俺はここ数日、何も食っていない。 「最近、食欲が出ないんだ。残したらもったいないから、お前にやる、それだけだ。」 ウル「分かったよ……」 そう言って、ウルは兎を食い始める。 俺は、少し離れた場所で腹ばいになってそれを見ていた。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加