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トライド「これぐらいあれば足りっかな…」
案外早く見付ける事が出来たがかなり大きな木で、幹ごと持って行くのは無理だった。だから枝を丁度良い長さに折っては下に落としていた。
さて、これを纏めて戻ろう…と思った時、俺は紐のような物に締め付けられていた。
よく見ると紐じゃない……蛇だ。血が強い酸性の、珍しい蛇だ。
なんとか逃れようともがくが、さらに締め付けられてしまった。
トライド「くそっ!」
急がなければ…急がなければ……
『急ぐ』それだけが俺の頭の中を支配する。
そして、その蛇の血が強酸なのを忘れて――
引き裂いた。
トライド「ぐ…あぁあぁぁッ!」
皮膚が焼ける。痛い。だが、早く行かないと…
ジリジリと焼け付くような痛みを堪えながら、俺は洞窟まで戻って来て、枝に火をつける。
トライド「オウガ…」
大分暖まったようで、気持ち良さそうに眠っているオウガの頭を撫でる。
しばらくすると、酸による焼け付くような痛みが治まった。胸の傷も、もう塞がった。
ふと洞窟の外を見れば、もう辺りは暗く、月が出ていた。
半バンパイアでもある俺は、夜になれば肉体的なダメージは早く回復する。
トライド「こんな身体でも、良い事あるんだな…」
自嘲気味に笑いながら呟いて、俺は歌を歌いだす。
トライド「真夜中の森の中 二人の少年は駆けてゆく 僕らは二人で一人 暗い森なんて怖くない さあ ここを抜ければ我が家だよ 早く帰ろう 闇が僕らを捕まえる前に…」
と…いつの間にか、オウガが起きていたようだ。
オウガ「兄さん…今の歌は?」
擦り寄ってくるオウガの頭を撫でながら、苦笑して俺は答える。
トライド「森に居た時、ウルがよく歌っててな…」
オウガ「…真夜中の暗い森かあ…」
オウガが、月を見ながら呟いた。
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