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茜はクローンが間合いに入る前に、パイプ棒を振る。 クローンはそれを慌てて後ろに跳んで交わした。 「行くぞ」と言った手前、すぐにまた元の均衡状態に戻ってしまったのは癪(しゃく)だが、武道の経験がない自分には、それを防ぎながら、攻撃するという器用な真似は出来ない。 まだまだ闘いは序盤なのだから徐々にいたぶればいい。 パイプ棒をじっと構えて持っておくだけでも、1時間あれば腕がパンパンになるはずだ。 空のクローンは立ち向かっては避け、立ち向かっては避けを繰り返す。 茜は15分くらいそれを続けると、呆れたように声をだした。 「あんた、さっきから避けてばっかり……闘う気あるの?」 「あるよ。ところで腕はどう? パイプ棒もそれだけ振れば重く感じてきたりしてないかな?」 最初の位置よりかは幾段か低くなっている構え そろそろ腕に疲れが来ているはずだ。 「なるほどね、それを狙ってたわけか……でもあんたこそ足大丈夫なの?」 しかし、そんな様子を見せようともせず、強がった表情で茜は少し震えているクローンの足を指差す。 「ちょっときついかな」 茜の腕とは逆にクローンの足も何度もの前後の動きで、少しきつくなっていた。
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