そしたら、そしたら。

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翻し扉の向こうへと去る背を見送り、私はまた印鑑を手に取る 「さてと…では、雲を捕まえに行きますかね」 残り一枚の書類に判を押して、椅子の背凭れをグッと押した 「さて、どこに居るのやら…」 大方検討はつきますが…… 辿り着いた部屋の前、軽く声を掛ける 「桜華…入っても平気ですか?」 そう、桜華の部屋 大体あの人はここに居る 「はい、どうぞお入り下さい」 「ちょっ…桜華ッ!」 襖を開ける寸前に見えた焦げ茶色 それにこの声 大当たり…といった所ですかね? 「失礼します。詩夢を引き取りに参りました」 「いらっしゃいませ因幡さん。詩夢さんなら、ここには居ませんよ?」 そう言って部屋の隅の怪しい動きをする物体にチラチラと目をやりながら、しかし惚けたフリをする桜華 これだからこの子は…… 「では野うさぎが一匹迷い込んで来ませんでしたか?」 「ああ、それなら綺麗な毛並みの野うさぎが一匹」 部屋の隅で未だに丸まっている詩夢を指差しながらケラケラと笑う それに苦笑を漏らすと、部屋の隅の野うさぎを摘み上げた 「さぁ、帰りましょうか。檻の中で飼ってあげますよ」 「ひっ……!わ、悪かった!俺が悪かったからっ!!」 「おや?野うさぎが喋りましたよ桜華」 「まぁ、然様ですか」 二人で控え目に笑みを零せば、詩夢は「笑うなっ!!」とひっきりなしに騒ぎ立てる それがおかしくて 何より、愛しくて 部屋を後にし、抱き上げて強く抱き締めた 「い…なば………?」 それに戸惑った声を上げる詩夢が、余りにも可愛過ぎるものだから だから、ずっと言えなかった事を、今日……言おうと思った 「帰りましょう、詩夢」 「……………………うん」 珍しく大人しい詩夢の背中を摩りながら、思い浮かべた未来に笑んだ 「ねぇ、詩夢?」 まずは「大好きだよ」と言おう 「ん?何だ?」 それから「愛してるよ」と愛を囁いて 「帰ったら、お仕置きですからね?」 それから、それから 「いっ……嫌だぁぁぁあぁあ!!」 甘いお仕置きの後に、永久の愛を誓おう . 【それから、それから。】 END
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