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-ヒュウウウウウ。
冷たい風が、頬を撫でる。
ドクドクと、妙に鼓動が煩い。
風の音を、かき消すように。
-突如、風の流れが変わる。
さっきまで風が当たっていた頬に、何か温かいものがつく。
拭った手の甲は、紫色に染まる。
…あの人が、倒したのか-あんな化け物を。
-15分前-
都内の大学に通う深谷貴大はその夜、悪夢に魘されていた。
でっかいカニのような変なヤツに挟まれて…
ガバッ、と飛び起きた貴大の額には、大量の脂汗が。
「なんだあの夢は…うぅん…」
眠れないなと呟いて貴大はベッドから降り、徐にジャージに着替えて外に出る。
吠える隣家のペット・ジャーニーにちょっとそこまでだよと言い残し、貴大はゆっくり走り出した。
「ちょっと肌寒いかな」
と言って、両手に息をかける。
秋も深まる頃、午前1時にランニングをするにはやはりジャージだけでは足りなかったと、僅かばかり後悔した。
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