1人が本棚に入れています
本棚に追加
街灯の灯りが照らすその顔に、貴大は見覚えがあった。
しかし、自信がなかった。
貴大のよく見知った顔とは、かけ離れていたから。
だがよく見ればそうだとわかる。彼女の面影…
三年間も一緒にいた、顔を合わせてきた。
多少変わっても、判らなくなるものではなかった。
「もしかして、違ったらゴメン…キミ、セツナ…さん?」
自信はあったが、一応疑問型にしてみる。
「…!」
目を円くする女性。
じっと貴大を見つめる。ややあって、
「…えぇ、そう。セツナよ。でもなぜ…?」
女性の方は、まだ気付いてはいないようで、必死に思案しているのだろう、目が泳いでいる。
しばらくその様子を見ていた貴大は、種明かしをしようと決めた。
「やっぱりそうか。僕だよ、貴大。深谷貴大。覚えてない?高校の。クラス一緒だったろ?天海セツナ(あまみせつな)さん。」
セツナはちょっと考えたが、すぐに合点がいったように、あぁ、貴大くん、と言った。
「久しぶりね、元気だったかしら」
と普通のことを言っているようだが、セツナの目は依然不自然に泳いだままだ。
「あぁ、僕は元気だよ。キミこそ、元気だったの?卒業した途端連絡取れなくなっちゃって、心配してたんだよ。…あ?ってか、何で、キミが…こんなとこにいて…あのカニの化け物を…」
貴大はいましがたあった恐ろしい出来事を思いだし、そこに現れたセツナとの関係を理解出来ずに悶絶する。
最初のコメントを投稿しよう!