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「はいただいま」と声を投げ、今日はいやに千客万来ですねぇと口の中で呟いて立ち上がる。
ドアを開けると、そこに立っていたのはまだ若い女だった。
「あ、あの。お願いがありまして……」
思いつめたような表情で、背の高い男を見上げた。
あぁ、またまたこっち方面ですか、と男は内心げんなりしつつ、「中へどうぞ、お茶をお出ししましょう」と手招く。
「お邪魔します」と入ってくる女の向こうで、閉まるドアの隙間から重い鈍色の曇り空が覗いていた。
遠雷が聞こえた気がした。
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