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(さて、今度はどんな噂になるのやら。) まさか夜這いに行って斬りつけられたなんて馬鹿正直には言えないだろう。 それも相手が武家や金物屋の女ならともかく、妙な格好した遊女如きに斬られたなどとは言えない。 どうせ在りもしない辻斬りの所為にして、尾鰭をつかせて武勇伝として吹聴するのだろう。 それがやがては瓦版へ―――……。 (ま、あっしの知ったこっちゃないわな。) 遊女は近くの井戸で水を汲み上げ、濡らしたボロ雑巾で部屋の血を拭き取った。 まだ血の匂いはするものの、そんな事は気にならない。 壁にもたれかかり、脇差しを抱え、遊女は浅い、浅い眠りについた。
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