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オーマサカリナッタリ村への道中は厳しいものだった。
あんぱんマンティス、天空機スカイライザー、ゾンビニエンスストア……とにかく強力な魔物がウジャウジャしていた。
「もう少し情報収集してから行けば良かったかな……」
マッスルメの食欲をそそる香りのする乾いた触手から逃れながら、俺は呟いた。
これだけ近いなら誰か何か知っていただろう。
俺は俺の迂闊さに嫌気が差した。
再び魔物から逃げるのに成功した俺は、ようやくオーマサカリナッタリ村に着い……た……?
………
……
…
そこは焦土になっていた。
おびただしい瘴気が蔓延し、魔物が盛り沢山に湧いている。
「アークよ」
今度ははっきり聞こえた。
背後から掛けられたのはさっきの声だ。
反射的に振り返ると、そこに1人の男が立っていた。
「我息子、アークよ。やはりお前、記憶が戻っていたか……」
「ああ、でも
「すまなかった!!」
あんた誰? と聞こうとしたら喰い気味に謝られた。
「ここ、オーマサカリナッタリ村は村を上げてお前に勇者としての英才教育をしていた。父と母が聖騎士と白魔法使いだったばっかりに、お前には過度な期待を背負わせてしまった……」
なんか語り始めた。
「お前は臆病……いや、優しい人間だった。辛かっただろうな。そう、そしてあの日がやってきた……邪教皇ゼピルムの勇者狩りの日が……」
なんか凄い話になってきたな。
「どこからお前の情報が漏れたのかは今になってもわからない。あいつは強かった……私では歯が立たなかった……。そして母さんは、お前を庇って……くっ」
そこで少し泣いて、話が途切れた。
「そして母さんは死ぬ寸前にお前の記憶を消した。勇者狩りから逃れさせるために、そしてアーク、お前から勇者という重荷を降ろすために……」
「そうだったのか……」
「えっ」
「えっ」
「まさかアークお前、記憶……」
「あー、うん。全部は戻ってなかった」
「それを早く言え!!」
「いや確かめろよ!!」
「……やっちまった」
親父は頭を抱えて後悔の念に苛まれていた。
この男もまた俺同様まぁまぁアレらしい。
いやー俺の親父なだけあるな。
「ありがとう、親父。なんとなく俺のするべきことがわかったよ」
俺は親父に背を向けて歩き始めた。
「ああ、親父、俺は……」
俺は……
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