悲劇の輪舞

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ダンテル松本……もとい、ドムテール米山の意識の左腕が伸びる!! それは勇者の意識を掴み、その思考にバグを送り込む!! ――【魔王は敵だ、倒せ】―― 「魔王は、敵……そうだ……俺は……勇者……だ……」 魔王とゼピルムの間に勇者は割り込んだ。 「勇者、お前、私を助けに来てくれたのか!!」 もちろん米山は勇者にハリ戦を使わせるような真似はしない。 使わせるのは……呪文。 「俺が勇者、勇気の者であるならば、その勇気には力があるはず。俺は俺自身の勇気に願う、光輝く力となって眼前の魔を討ち滅ぼせ。其は何物より白き勇気の光条、ライトニング・ブレイブ」 勇者の放った光が、魔王の体を貫いた。 「な、んで……」 親に捨てられた子どもはこういう表情をするのだろうか。 魔王は目を見開き、口を開け、絶望の蒼白に顔を染めた。 「お前……今の魔王の話、聞いてなかったのかよ!!」 レイラは吼えた。 「くくく……やっぱり勇者は魔王と相容れない存在だったのかなあ?」 ダンテル松本はその様子に嗜虐の笑みを浮かべる。 「松本さんっ、あなた……!!」 白魔法使いが咎めるが、松本は見向きもしない。 「これはこれは」 ゼピルムは膝をつく魔王を見下して言った。 「滑稽でございますね、魔王様。あなたほどに求心力の無い悪魔も珍しい。最期の最期まで裏切られてしまうとは」 「あ……あははははは……」 魔王は乾いた笑いを溢した。 「おや、気が狂ってしまわれましたかな」 「許さない。私はもう、誰も」 急速に衰えていく魔王の生命力が、その倍以上の早さで魔力へと変換され、宙空に凝縮され始める。 「なっ……まだこのような力が……!!」 「私は絶望した。この定められた運命と、心を削る彼らの裏切りに。だがどうだろう、私はいつも絶望と共にある。なぜなら魔王であるから。絶望よ、全てを恨め、負の力となって全ての隣に溢れ返れ。たとえ誰の隣にだって行くことができるはず、お前は何時だって私の隣人なのだから。さあ世界よ、腐り落ちろ。其は何物より深き世界を破局させる絶望、ワールドエンド・ディスペィア」
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