偽物欠落

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ギリリ… 己の歯軋りでいつも眼が醒めるのはアァシの定番だが今宵は空腹のオマケ付だ 全力で只、ひたすら身体だけ動かして何から逃げているのか、そもそも逃げている為に疾走していたのかアァシは途中から分からんなってきていた気がする いつからこんな全く持って知らぬ竹林に居るのか、いつ迄居るべきなのか…そんな事解せぬが寝心地は悪くはない 一番の問題は空腹との闘いだけであろう アァシの好物のあんパンはユートが居ない今、喰らう事は出来ぬ 一応鞄を漁ってみたら財布は出てきたが、こんな丑三つ時にコンビニに行きゃあ即刻補導されンだろう ジグッ 飴玉一粒出て来ない代わりに、中指に鋭い痛みが走ったから引っこ抜いて見ると、カッターの刃がサクッと刺さっていやがった 暫く滴る血液を見て あぁパッキンだか赤髪だかから頂戴した… ボコして真っ赤に染まった顔面に白眼を剥いた無念極まりないお姿… 等とボンヤリ今日の出来事を思い出す 奴の頭の血も紅い… ユートの鼻血も紅い… 親父殿の歯茎からも紅い… だのに どうしてアァシは黒いンだよ カッターを思い切り引き抜いて竹に投げつける スコンと細やかな音を響かせ刺さる 中指から滴る血液を舐め取れば、甘くて芳しく…懐かしい味がするのう… 空腹と疲労でアァシの海馬が要らぬ記憶をほじくり返しやがった アァシは中指をくわえたままついつい船を漕いで海馬に取り込まれたらしい
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