―プロローグ―

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目の前の少女の頬が膨れる。 整った顔立ちで普段は実年齢より上に見えるが、今はその仕草のせいでいくつか幼くみえる。 「冗談じゃないよ。他に好きな人が出来たんだ」 「ねえ、しつこいよ?そんなことより早く――」 「真面目に聞け!!」 「――っ!?」 ビクッと少女の身体が跳ねる。 二人の言葉が途切れ、再び静寂に包まれる放課後の教室。 窓の外からはポツポツと雨音らしき音が聞こえてくる。 今はこれが唯一の音だ。 「ごめん。でも別れて欲しいのは本当なんだ」 「……どうして?」 何とか笑顔で話そうとする少女。 しかし、それは失敗に終わり、少し引きつった泣き顔になっていた。 昨日までとは全く対照的な表情に、胸がズキズキと痛む。
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