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壁に押しつけられ、何度も口づけられる。
口の中で動く舌の柔らかい感触に、背筋が震える。
「神崎、さ……」
痛いくらいに抱きしめられて、身動きが取れない。
「おいで」
神崎さんは私の手を引き、リビングに移動する。
相変わらず長いソファに、向き合って座る。
神崎さんの指が私の髪を撫でた。
「花音、もう何も考えなくていい」
「……え?」
「全部、忘れて。
俺のことだけ考えて」
熱い吐息、強い眼差し、力のこもった手のひら。
その言葉の意味を考えて。
……少しだけ、怖いと思った。
けれど。
「……はい」
私は小さく頷いた。
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