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「い、たい……」
つい洩れた声が届いたのか、抱き締めてくる腕の力が少し弱まる。
それでもまだ続く抱擁に、私は戸惑いながら彼の顔を伺うべくなんとか顔を上げてみる。
「…………へ、」
見上げた彼の顔は、涙に濡れていた。
そして思い出す。彼に伝言も残さず部屋を出てしまっていたことを。
「…………あ、」
咄嗟に、謝らなければ、そう思って声を出そうとした私より先に彼が声を発した。
「よかったぁ……」
心から安堵した声に、私は言葉を無くす。
「よかった。アイツに連れ去られちまったのかと思った」
……アイツ?
「今日、やっと、ストーカーの正体が分かったんだ」
……!?
「なんで……それを……」
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